つい先日、仲の良いある飲食店主が僕に愚痴ってくれました。
うちは「これ!」と見込んだ銘柄を絞って狭く深く提供するスタイルにようやく切り替えたのだが有り難いことにそれ以外の銘柄の蔵元も気に入って来店してくれる。それがそこそこ有名な蔵元さんだけに当日はその銘柄も可能な限り用意してお迎えする。しかしそれが頻繁になり、いつしか彼と繋がりのある他の蔵元さんも誘って一緒に来るようになり予約の際にそれとなく(一緒に来る蔵元さんの)酒も入れておいてくれみたいに言われ、気が付くとその「絞って深く提供するスタイル」がどんどん崩れて来ていることに気が付いて
オレ、何のために店やってんだかわかんなくなった。
って、肩を落としていたのです。
僕と違って優しい方なのです。僕なら「来てくれるのは有り難いけどおたくの銘柄はありませんよ(にっこり)」で済む話なのですが(笑)、せっかく足を運んでくれる蔵元に恥をかかせたくないという彼の気遣いが仇となっている訳です。
あれもこれもと銘柄をいっぱい並べているお店ならいいのです。その都度その都度、銘柄がいろいろ変わってお客さまも楽しいだろうし。だけど彼の店はとにかく彼の見込んだ「これ!」という銘柄に特化した店づくり(たぶん10銘柄くらいじゃないかなぁ)をしている訳で、普通の店とは違うことをこの蔵元さんもわかってるはず(わかってて無視している可能性もあり)なのです。
だから有名な蔵元さんは傲m(以下自粛)
いつも、いろいろなところで思うのです。強者・弱者という言い方の是非はともかく、やはりどんな世界でもその関係性というものは確実に存在します。
「造ったその酒を買って売ってくれるのは誰か」という意味では飲食店が強者で蔵元は弱者です。でもそれが有名銘柄で入手しづらいとなったらその立場が逆転するかも知れません。
今回のケース、蔵元は蔵元である前に「お客さま」ですから「その店に足を運んでお金を落としてくれる」という意味も含めて蔵元が強者で飲食店が弱者となる訳です。だから気も遣うしポリシー曲げてまで対応するのです。
飲食店って大変だわー。
もしもこの蔵元が「おたくのお店は信念を持って経営してるんだからうちの酒がないのが当たり前だ。だから気を遣わないでくれ。オレはおたくの店が好きだから通ってるだけだ。たまに知り合いの蔵元も連れていくが同様だ。オレがきちんと話をした上で連れていく。・・・ただ、いつかうちの酒を気に入ってくれたら是非ラインナップに加えてくれ。そうなるようにうちも頑張るから」
なんて言ったら一発で惚れちゃうんだけどなぁ。それが「強者が弱者に気を遣う」ということだと僕は考えています。だって元々は対等な関係なんだもん。対等な中に自然発生するこの「立場」を気遣いでバランスを取れる人こそが本当の意味での強者だと思うんだよね。
そういえば、とあるお金儲けが上手な会社主催の有名イベントに参加し続けてる蔵元も言ってたっけ。
もうやめたい、って、なかなか言い出せないんですよ・・・
本当の強者なら「おたくはうちのイベントに長く出てくれて成長もした。こちらも感謝しているよ。うちはいつまで出てくれても大歓迎だが、そろそろ名前も売れてきたのだから卒業したくなったらいつでも言ってくれ、喜んで送り出すよ」
なんて言ったら惚れ直しちゃうんですけどね~~~。
同じことは酒屋と蔵元にもあります。
自身にも省みながら、今回の件を生かしていきたいと思いました。
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強者が弱者に気を遣う関係って必要よね、ってお話。
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